私はADHDとASDの混合と主治医から口頭で伝えられており、どちらについても薬物療法が入っている。
ただし22年1月現在、診断書上で確認したのはADHDのみ。
……というのはどうでも良いが、とりあえずASD周辺と思われる質問紙をやってみた。
AQ(自閉スペクトラム指数)
若林明雄, & 東條吉邦. (2004). 自閉症スペクトラム指数 (AQ) 日本語版の標準化 高機能臨床群と健常成人による検討. 心理学研究, 75(1), 78-84.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/75/1/75_1_78/_pdf
李璐, & 玉岡賀津雄. (2019). 中国語版 「自閉症スペクトラム指数 (AQ)」 の開発. 音声言語医学, 60(4), 314-324.
前者は50問版(AQ50という。4択だが実質2件法)、
後者はその中から貢献度の高い項目を抜粋した25問版(AQ25という。4件法)。
AQ50は病院で有料の検査として行うものだが、こんなに簡単に手に入ってしまって良いのか。
若林ら2004によると、50点満点のうち33点以上は、当時の高機能自閉症/アスペルガー症候群の9割近くが含まれる一方、健常群の3%しか該当しない。したがって、33点以上が障害レベルの目安とのこと。
李ら2019のAQ25には目安の得点はない。p.321のグラフを見る限りは、75点満点のうち56点だと上位2.5%(40人に1人)である。
私のAQの結果
ちょうど障害レベルの目安の得点といった所。
私のADHD要素はASD由来な気がしている。AQにおける「注意の切り替え」の高得点がそれか。
下位項目「コミュニケーション」の得点率がAQ50とAQ25でずいぶん異なる。
AQ50の「コミュニケーション」の設問を見てみた。一部に「積極奇異にしか当てはまらないのでは?」「そもそもコミュニケーションではないのでは?」と思われるものが見られた。
AQ25ではそのような設問が省かれた形だろう。
「細部への注意」のみ、AQ50、AQ25ともに得点率が4割だった。
AQ25では、細部への注意は「他の4つの尺度と弱い負の相関が見られた」(李ら2019,p.321)とある。やはりどこか異質なんだろう。
そもそもASDの検査としてこの尺度が妥当なのか?発達障害はADHDとASDの併発が多いが、併発例が細部に注意するとは思えない……などとは思う。
Galex(アレキシサイミア)
後藤和史, 小玉正博, & 佐々木雄二. (1999). アレキシサイミアは一次元的特性なのか?―2 因子モデルアレキシサイミア質問紙の作成―. 筑波大学心理学研究, 21, 163-172.
Gotow Alexithymia Auestionnaire(Galex)というアレキシサイミア質問紙の作成。
アレキシサイミア特性を2因子、4因子に分けている。
後藤和史はこの質問紙を元に、後に多くの研究を繰り広げている。
アレキシサイミアとは?↓
私のGalexの結果
この質問紙は1~7点の7件法なので、1問あたり少なくとも1点入ってしまう。0点の選択肢がない。
矢印の先の数字は、最低点が0点だった場合を課程したもの。そうしないと、高得点なのかどうか個人的にはわかりにくい。
結果は感情の表現不全に振り切れている。
これについて私の感覚としては、感情は遅れて認識するが、わざわざ言語化・ラベリングする習慣がない。自分の重要な気持ちを話すのはいつも決死の覚悟。
ところで、この「体感・感情の認識表現不全」のみが高いという結果は、アレキシサイミアとは異なる可能性が以下の論文で示唆されている。
後藤和史, & 小玉正博. (2000). 夢見体験からみたアレキシサイミア傾向と内的体験の言語的表現との関係. カウンセリング研究, 33(3), 256-264.
p.262では次のように述べられている。
『体感・感情の認識言語化不全』尺度は、表面的には自己の感情の認識・言語化が困難な傾向を測定しているようであるが、実際は、処理できないほど大きな陰性感情あるいは多種の陰性感情を体験していることによって「何がなんだかわからなくなっている」という感情的混乱傾向あるいは全般的な心身不調傾向を間接的に測定している可能性が考えられる。(後藤ら2000、p.262)
というのも、「『体感・感情の認識言語化不全』傾向が高ければ高いほど、内的体験を詳細に言語化できるということを意味して」(後藤ら2000、p.261)いるようである。
尺度の名前が後藤ら1999と違うのは気にしない。
陰性感情の体験?
陰性感情は一般的に表出するのは憚られる類のもの。「感情の表現不全」のみが高いというのは、陰性感情のやり場がないという可能性もあるか?
また、ASDとアレキシサイミアの関係を調べたものには次のようなものがある。
後藤和史. (2013, September). 自閉症スペクトラムがアレキシサイミア傾向に与える影響. In 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第 77 回大会 (pp. 1EV-061). 公益社団法人 日本心理学会.
「感情認識言語化困難がコミュニケーション不安と正の相関を持つ」(後藤2013)とある。
「コミュニケーション不安」とはAQの「社会的スキル」「注意の切り替え」「コミュニケーション」から構成されるもの。「自閉症スペクトラムがアレキシサイミアの背景にあることを示唆している」(後藤2013)とのことで、私の「感情の表現不全」の高さも自閉の延長線にあることは言えるだろう。
CEQ(空想傾向)
岡田斉, 松岡和生, & 轟知佳. (2004). 質問紙による空想傾向の測定: Creative Experience Questionaire 日本語版 (CEQ-J) の作成. 人間科学研究, 26, 153-161.
空想傾向の定義はこの論文からは謎だが、空想傾向は想像の世界で生活したり、事実と空想を混同したりする傾向と関連づけられるらしい。
私のCEQ日本語版の結果
これもアレキシサイミアのGalexと同じ処理をした。各設問最低1点は入ってしまうので、「最低0点だったらどうか?」を書いたのが最も右の数字。
「空想の鮮明性」にやや点が入るが、他は総じて殆ど点が入らない。
質問紙を見返してみて思ったが、この尺度だけは自分の内部にある空想世界について反映できる。
子どもの頃の体験は外界について空想しているし、異常な体験は超常的な設問が多い。
私は幼少期から空想世界とそこに住む1人を抱えて生きているような感じがあるが、恐らくこれはGalexとCEQの「空想」には該当している。
AQの「想像力」と、Galexの「空想」やCEQの「空想」は殆ど別物だろう。
AQが聞く想像力はそれこそ、自身の外界で起こっていることに想像を働かせることのように思える。
一方のGalexとCEQは内界の白昼夢などが含まれる。